ユーザーは皆さんのアプリにシームレスな体験を期待しています。アプリがクラッシュすれば、低評価のレビューやアンインストールが増え、ブランドにダメージを与えてしまうでしょう。その一方で、コミュニティの皆さんとの対話の中で、Kotlin を採用する主な理由の 1 つはコードの高い安全性であるということをよく耳にします。実際に何社かのパートナーは、Kotlin を使ってコードの安定性を改善しています。この投稿では、その方法をいくつか紹介するとともに、Google Play ストアの統計結果にも注目し、Kotlin とクラッシュ数との間に相関関係があるかどうかを確認してみたいと思います。
アプリの品質
アプリの品質が影響するのは、ユーザー エクスペリエンスだけではありません。クラッシュ多いと、他のいくつかの要素にも悪影響が生じます。
- アプリの見つけやすさ— Google Play ストアのおすすめは、人間による選定とアルゴリズムによる計算の組み合わせで行われています。この計算においては、アプリの品質が特に重要な考慮事項となっています。
- ブランド— プロダクトのパフォーマンスは評価やレビューに影響する可能性があり、それがブランドに影響する可能性があります。
- (エンゲージメントの高い)ユーザーの多さ — 実質的なトラフィックとブランドの認知が上昇すれば、ユーザーの獲得と維持が促進される可能性が上がります。それにより、エンゲージメントや下位ファネルの指標にも影響が出る可能性があります。
Kotlin で構築したアプリはクラッシュする可能性が 20% 低い
Google Play のトップ 1,000 アプリを調査してみたところ、Kotlin を使っているアプリは、それ以外のアプリよりもユーザー 1 人あたりのクラッシュ発生率が 20% 低いことがわかりました。
その具体例として、コードの 74% が Kotlin である Swiggy のエンジニアリング チームは、新機能の開発を Kotlin に移行して以来、クラッシュを 50% 減らしました。こういった結果を Kotlin はどのように実現しているのか見ていきましょう。
NullPointerException を回避する
Google Play でのクラッシュの原因ナンバーワンは NullPointerException です。Google Home チームは、2018 年よりすべての新機能を Kotlin で書いています。その結果、1 年前と比べて null ポインタによるクラッシュが 33% 減少しました。
Google Home が NullPointerException を 33% 削減
NullPointerException
を避けるには、メソッドを呼び出したりメンバーにアクセスしたりする前に、扱っているオブジェクトの参照が null でないことを確認しなければなりません。Kotlin では、null 可能性が型システムの一部として組み込まれています。たとえば、変数は最初から null 可能か null 不可能かを宣言する必要があります。null 可能性を型システムの一部として組み込むことで、コードベースについての自分の記憶や知識、またコンパイル時警告(フィールドやパラメータに @Nullable
アノテーションを付けた場合)に頼る必要はなくなります。null 可能性を強制することで、単なる警告ではなく、コンパイル時にエラーが発生します。null 可能性を扱う方法については、こちらのページをご覧ください。
一般的な問題を回避する
私たちデベロッパーは、気づかないうちにアプリにたくさんの問題を紛れ込ませています。そのほとんどはあまりに軽微で、調査するのは難しいかもしれません。そのような問題のうち、Kotlin を使うことで回避できるものをいくつか紹介しましょう。
hashCode()
と equals()
2 つのオブジェクトが等しい場合、それらのハッシュコードも同じである必要があります。しかし、どちらかのメソッドを実装し忘れたり、クラスに新しいプロパティを追加したときに更新し忘れてしまったりすることがよくあります。データを保持するためだけのクラスを扱う場合は、Kotlin のデータクラスを使うようにしましょう。データクラスを使うと、コンパイラがhashCode()
と equals()
を生成してくれるので、クラスのプロパティを変更すると自動的に更新されます。
構造等価性と参照等価性
2 つのオブジェクトは構造が等しい(中身が同じ)のでしょうか。それとも、参照が等しい(ポインタが同じ)のでしょうか。Java プログラミング言語では、プリミティブには常に ==
を使います。そのため、実際には構造が等しいかどうかを確認(equals()
を呼び出してチェック)したいのに、オブジェクトにも ==
(参照が等しい)を使ってしまうというのがよくある誤りです。まず、Kotlin にはプリミティブ型はなく、Int
や String
などのクラスを使います。つまり、すべてがオブジェクトなので、オブジェクトとプリミティブ型の区別を気にする必要はありません。次に、Kotlin では ==
は構造が等しい、===
は参照が等しいと定義されています。したがって、誤って参照が等しいかどうかを確認してしまうことはありません。
else if else if else では十分でない場合にどうするか
enum を扱う場合、通常はすべての可能なケースを記述しなければなりません。そのため、switch
や if else
チェーンを使うことになります。enum を修正して新しい値を追加する場合、enum を使っている各コード スニペットを手動でチェックし、新しいケースに対応しているかどうかを確認する必要があります。しかし、これはエラーにつながりがちです。Kotlin では、when を式として使うと、この確認をコンパイラに任せることができます。すべての可能な分岐に対応していない場合、コンパイラ エラーが発生します。
まとめ
ユーザーやブランドにとって、アプリの安定性は重要です。Kotlin を使い始めてクラッシュ率を減らし、ユーザーの満足度を高めてアプリの高評価を守り、ユーザーの維持や獲得につなげましょう。
詳しくは、Kotlin でより優れたアプリを作成するためにできることをお読みください。また、ケーススタディをご覧いただき、Kotlin のメリットをご確認ください。世界でデベロッパーに広く使われている言語の 1 つである Kotlinを使ってみたい方は、入門ページをご覧ください。